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Why?

パスコンは、多ければ多いほどよいのか?

BGAの裏のパスコンを10個外しても、インピーダンス特性はあまり変わらなかった

1F 問い・現象2Fなぜ? → 学ぶ 解説 久保寺 忠 2026.10 読了 約5分
SHORT ANSWER — 先に結論

パスコンの必要な量は、LSIごとに決まっている電源・グランド間のインピーダンス(ターゲットインピーダンス)で決まります。マージンを多く見るほど数は増えますが、その多くが「お守り」になっていることがあります。実際に、BGAの裏のパスコンを10個外しても、インピーダンス特性はあまり変わりませんでした。

01 現象

パスコンは、とてつもなく多い

LSIの電源とグランドの端子のペアごとに、バイパスコンデンサ(パスコン)を一つずつ入れる。これが一般的な設計法です。これを実現しようとすると、とてつもなくたくさんのコンデンサを使わなければなりません。

でも、もしこれらの多くが「お守り」だとしたら、どうでしょうか。

02 物理

パスコンは、何のために入れるのか

パスコンは、LSIの電源とグランドの間のインピーダンスを下げるために使います。電源回路からLSIまで、高い周波数成分を含んだ電流が長い距離を流れると、ノイズの大きな基板になってしまいます。そこで、パスコンに電荷を溜めておき、短い距離で電流を供給するのです。

電源・グランド間のインピーダンスをどれくらいにすればよいかは、LSIによって決まっています。これをターゲットインピーダンスといいます。そのインピーダンスはパスコンの容量で決まるので、マージンを多く見れば見るほど、パスコンの数は増えていきます。

03 解析

10個外して、インピーダンスを比べる

BGAパッケージの裏側に配置されたパスコン(図6の四角いところ)です。たくさん搭載されている様子が分かります。図7は、そのときの電源・グランド間のインピーダンス特性です。ターゲットインピーダンスに対して、だいぶ余裕があります。

図8と図9は、パスコンを10個取ってしまったときの特性です。あまり大きな変化はありません。

BGA裏のパスコン配置とインピーダンス特性。図6・7は外す前、図8・9は10個外した後
図6・図7:パスコンを外す前の配置とインピーダンス特性/図8・図9:10個外した後。解析ツール PIStream(NEC情報システムズ)
04 設計判断

お守りを減らすと、何が変わるか

部品が多くなれば、プリント基板設計の難易度が上がります。空いたスペースに部品を置いて長い配線で結ばざるを得なかったり、半田面に置いてスルーホールで接続したり。すると、配線の影響で部品の効果を十分に発揮できなかったり、スルーホールによってグランドインピーダンスが上がってしまったりと、新たな問題を作ってしまうことになります。

コストの面でも差は大きくなります。たとえば基板1枚あたり50個の部品を減らして、組立費込みで100円のコストダウンができたとします。1万枚で100万円です。

ただし、むやみに減らせばよいわけではありません
  • パスコンは、外から侵入するノイズに対しても重要な働きをします
  • 減らすかどうかは、EMI(出すノイズ)とEMS(受けるノイズ)の両面で検討します
  • その上で、ターゲットインピーダンスから、本当に必要な量を見積もります

あなたの基板のパスコンは、何個がお守りでしょうか?

「前の機種で問題が出たから、念のため増やした」。そうして増えた部品は、なかなか減らせません。どこまで減らせるかは、基板ごとに確かめる必要があります。

久保寺 忠
解説

久保寺 忠株式会社システムデザイン研究所 代表取締役

1993年からEMC対応設計を研究。富士ゼロックスでCOB・MCMなどの実装技術開発とEMC対応技術開発に携わり、2006年に株式会社システムデザイン研究所を設立。著書『高速ディジタル回路実装ノウハウ 高速信号を確実に伝送する基板設計とノイズ対策』。

この記事の解析条件

対象BGAパッケージの裏側に配置したパスコン
比べたものパスコンを外す前と、10個外した後の、電源・グランド間のインピーダンス特性(0.1〜1000MHz)
解析ツールPIStream(NEC情報システムズ)
出典システムデザイン研究所 Webサイト「低コストでのノイズ低減実現」(技術情報)を再構成