接触放電で10kVの静電気を入れても、基板の配線に10kVがかかるわけではありません。シミュレーションでは、物理的にはあまり離れていないグランドでも、ピークでおよそ90Vでした。静電気のように高い周波数成分を含むインパルスは、インピーダンスが高いところで電圧が大きく下がるからです。各部の電圧が事前に分かれば、耐圧の高い特殊な部品を選ばずに済みます。
10kVに耐える部品が、本当に必要か
基板の外から侵入する静電気ノイズ(ESD)。製品の仕様で、基板に接触放電で10kVまで耐えなければならないとします。では、基板上の配線には、どれだけの電圧が発生するのでしょうか。
耐電圧を気にせずに対策をしてしまうと、思わず高価な部品を使ってしまいそうです。
ねじ止め部から静電気を入れる
図10の丸いところは、ねじ止め部です。この横のワニ口クリップから静電気を入れた場合、矢印Aで示すグランドには、どれほどの電圧が発生するでしょうか。
入れるノイズ電圧は10kVとしています(図11)。回路のインダクタンスによって、反射の影響が出ています。なお、図10ではグランドが切れているように見えますが、下のグランド層でつながっています。

すぐそばのグランドで、約90V
答えは図12です。物理的にはあまり離れていませんが、ピークでおよそ90V。10kVから、ずいぶん電圧が落ちています。
なぜ、こんなに電圧が下がるのか
図13は、ワニ口クリップと矢印Aのグランドの間のインピーダンス特性です。高い周波数になるほど、インピーダンスが上がっています。
つまり、静電気のように高い周波数成分を含むインパルスは、インピーダンスが高いところでは電圧の低下が激しくなるということです。
どこにでも10kVがかかると考え、すべての部品に高い耐圧を求めてしまう。
静電気は周波数の高い現象。経路のインピーダンスによって、場所ごとに電圧はまったく違う。
先に電圧を知れば、部品が変わる
10kV以上の静電ノイズに対応するため、耐圧の高い部品を選定する人がいます。しかし、耐圧が高くなると、サイズが大きくなり、コストも高くなってしまいます。
この例のように、事前に基板各部の電圧が分かれば、特殊な部品を選ぶ必要がなくなり、コストダウンにつながります。
- シミュレーションを使えば、試作の前に、基板各部の電圧やインピーダンスを確かめられる
- ただし、その結果を見て「なぜそうなるのか」を考え、設計に戻すのは設計者自身
その部品の耐圧、本当に必要でしょうか?
「念のため、高耐圧品にしておいた」。その判断が、サイズとコストを押し上げているかもしれません。基板のどこで何Vになるのかを、一緒に確かめてみませんか。
この記事の解析条件
| 入れた静電気 | 接触放電を想定した10kVのインパルス。ねじ止め部の横(ワニ口クリップ)から |
|---|---|
| 見た場所 | ねじ止め部のすぐそばのグランド(図10の矢印A) |
| 解析ツール | S-NAP(MEL)による電磁界シミュレーション |
| 出典 | システムデザイン研究所 Webサイト「低コストでのノイズ低減実現」(技術情報)を再構成 |