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Why?

10kVの静電気は、基板の中で何Vになるのか?

ねじ止め部から入れた静電気は、すぐそばのグランドでピーク約90Vだった

2F3F学ぶ → 相談する 解説 久保寺 忠 2026.10 読了 約5分
SHORT ANSWER — 先に結論

接触放電で10kVの静電気を入れても、基板の配線に10kVがかかるわけではありません。シミュレーションでは、物理的にはあまり離れていないグランドでも、ピークでおよそ90Vでした。静電気のように高い周波数成分を含むインパルスは、インピーダンスが高いところで電圧が大きく下がるからです。各部の電圧が事前に分かれば、耐圧の高い特殊な部品を選ばずに済みます。

01 問い

10kVに耐える部品が、本当に必要か

基板の外から侵入する静電気ノイズ(ESD)。製品の仕様で、基板に接触放電で10kVまで耐えなければならないとします。では、基板上の配線には、どれだけの電圧が発生するのでしょうか。

耐電圧を気にせずに対策をしてしまうと、思わず高価な部品を使ってしまいそうです。

02 解析

ねじ止め部から静電気を入れる

図10の丸いところは、ねじ止め部です。この横のワニ口クリップから静電気を入れた場合、矢印Aで示すグランドには、どれほどの電圧が発生するでしょうか。

入れるノイズ電圧は10kVとしています(図11)。回路のインダクタンスによって、反射の影響が出ています。なお、図10ではグランドが切れているように見えますが、下のグランド層でつながっています。

ねじ止め部から静電気を入れたときのシミュレーション。図10 基板、図11 入力の電圧波形、図12 矢印Aの電圧波形、図13 インピーダンス特性
図10:ねじ止め部と測る位置(矢印A)/図11:入れた静電気の電圧波形(縦軸 ±10kV)/図12:矢印Aのグランドの電圧波形(縦軸 ±50V)/図13:ワニ口クリップと矢印Aの間のインピーダンス特性。解析ツール S-NAP(MEL)
03 結果

すぐそばのグランドで、約90V

答えは図12です。物理的にはあまり離れていませんが、ピークでおよそ90V。10kVから、ずいぶん電圧が落ちています。

04 物理

なぜ、こんなに電圧が下がるのか

図13は、ワニ口クリップと矢印Aのグランドの間のインピーダンス特性です。高い周波数になるほど、インピーダンスが上がっています。

つまり、静電気のように高い周波数成分を含むインパルスは、インピーダンスが高いところでは電圧の低下が激しくなるということです。

「10kVが入る」と考えると

どこにでも10kVがかかると考え、すべての部品に高い耐圧を求めてしまう。

「各部で何Vになるか」と考えると

静電気は周波数の高い現象。経路のインピーダンスによって、場所ごとに電圧はまったく違う。

05 設計判断

先に電圧を知れば、部品が変わる

10kV以上の静電ノイズに対応するため、耐圧の高い部品を選定する人がいます。しかし、耐圧が高くなると、サイズが大きくなり、コストも高くなってしまいます。

この例のように、事前に基板各部の電圧が分かれば、特殊な部品を選ぶ必要がなくなり、コストダウンにつながります。

シミュレーションは、結果を出してくれる。対策は、教えてくれない
  • シミュレーションを使えば、試作の前に、基板各部の電圧やインピーダンスを確かめられる
  • ただし、その結果を見て「なぜそうなるのか」を考え、設計に戻すのは設計者自身

その部品の耐圧、本当に必要でしょうか?

「念のため、高耐圧品にしておいた」。その判断が、サイズとコストを押し上げているかもしれません。基板のどこで何Vになるのかを、一緒に確かめてみませんか。

久保寺 忠
解説

久保寺 忠株式会社システムデザイン研究所 代表取締役

1993年からEMC対応設計を研究。富士ゼロックスでCOB・MCMなどの実装技術開発とEMC対応技術開発に携わり、2006年に株式会社システムデザイン研究所を設立。著書『高速ディジタル回路実装ノウハウ 高速信号を確実に伝送する基板設計とノイズ対策』。

この記事の解析条件

入れた静電気接触放電を想定した10kVのインパルス。ねじ止め部の横(ワニ口クリップ)から
見た場所ねじ止め部のすぐそばのグランド(図10の矢印A)
解析ツールS-NAP(MEL)による電磁界シミュレーション
出典システムデザイン研究所 Webサイト「低コストでのノイズ低減実現」(技術情報)を再構成